唾液によるPCR検査の特徴やメリット・デメリットを詳しく解説

監修医師プロフィール

吉嶺 太輔

鹿児島大学医学部医学科卒
皮膚科や在宅医療のクリニックを経て、現在、医療法人社団青い鳥会で在宅の訪問診療に携わり、自ら皮膚科を開業。
診療に従事していく中で今後のPCR検査の必要性を実感し携わる事に。
また、自分を必要とする患者様のためには休まず働き続ける覚悟の熱い医師です。

新型コロナウイルスが身近な存在になってしまった今、「自分もPCR検査を受ける機会があるかもしれない」と考えることが多くなったでしょう。

PCR検査は、鼻の奥に綿棒のようなスワブという医療器具を挿入する鼻咽頭検査が有名ですが、唾液を採取するだけの簡単な検査があることをご存知でしたか?

この記事では、唾液を検体にしたPCR検査とは何かを知っていただくために、唾液検査の特徴やメリット・デメリットなどを詳しくご紹介していきます。

PCR検査の必要性

検査イメージ

質問者

私の周りでPCR検査を受ける人が増えているのですが、PCR検査ってそんなに必要なのでしょうか?

吉嶺先生

PCR検査は言わずもがな、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染しているかどうかを調べる検査です。

従来の鼻咽頭ぬぐい液を使ったPCR検査を受ければ、100%に近い確率で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染しているかどうかを判定できるのですよ。

質問者

そんなに高い確率で検査できるなんて知りませんでした。

私も受けたいのですが、どんなタイミングで受ければいいのでしょうか?

吉嶺先生

息苦しさや強い倦怠感、味覚を感じないなど、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が疑われる症状が現れた場合、まずは医療機関に電話で症状を伝え、必要に応じて医療機関でPCR検査を受ける流れになります。

無症状の方でも、お仕事の関係でPCR検査が必要な場合は民間の検査機関などで自費診療にて受検できます。

質問者

無症状でも感染が心配だったら自費診療で受けられるのですね!

吉嶺先生

他にも自分が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者の濃厚接触者になってしまった場合などは、医師の勧めでPCR検査を受ける必要があります。

PCR検査とは、鼻の奥の粘膜や唾液を採取して専用の薬液でウイルスの遺伝子を増幅させ、特定の病原体を検出する検査です。

万が一、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染していた場合は、適切な処置や治療を受けなければならず、家族や会社の仲間に感染させないように隔離された生活をしなければなりません。

自分を守るため、家族や大切な人を守るための検査でもあり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染している可能性が高まった場合は医療機関にすぐに相談するようにしましょう。

唾液によるPCR検査の特徴

採取した唾液が入った容器

質問者

鼻に綿棒を入れられるPCR検査に抵抗があります。

他にもっと楽に受けられる検査はありませんか?

吉嶺先生

あります。

PCR検査は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染しているかどうかを3種類の検体で調べられます。

一つ目は鼻の奥にある鼻咽頭の拭い液、二つ目は鼻の入り口付近にある鼻腔の拭い液、そして三つ目は自然と出る唾液になります。

質問者

唾液で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染しているか分かるのですね!

痛くない検査でしょうか?

吉嶺先生

唾液の採取ですが、専用の容器に自力で唾液を出してもらいますので痛みは全くありません。

ただし、唾液を出すのが苦手な人は時間がかかる可能性もあります。

質問者

そんな簡単な検査があったのですね、詳しく教えてください!

吉嶺先生

畏まりました。

唾液検査の特徴を他の検査と比較しながら詳しく解説していきましょう。

唾液検査はその名の通り、唾液を採取するだけの簡単なPCR検査です。

PCR検査は、鼻咽頭拭い液や鼻腔拭い液を検体にしてウイルスの遺伝子を専用液で増幅させ、ごく僅かに存在する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発見する検査でしたが、唾液を検体にした場合でも有効であることが証明されました。

患者様から医療従事者に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を感染させてしまうリスクを避けられる安全な検査として、実施する医療機関や検査機関が増えています。

唾液検査を受けられる場所

厚生労働省は唾液によるPCR検査の有効性を認めており、従来のPCR検査を受検できる医療機関以外にも、病院やクリニックなどの実施機関が増えてきています。

【唾液によるPCR検査を受けられる場所】

  • 医療機関
  • 帰国者・接触者外来
  • 美容クリニック
  • 民間PCR会社
  • 自宅(PCR検査キット)
  • その他

唾液検査はインターネットを介してPCR検査キットを購入し、自宅で行うこともできます。

都道府県が指定した医療機関以外で唾液検査を受ける場合は、自費診療となることを覚えておきましょう。

実際の検査方法と流れ

唾液検査は、専用の容器に1ml〜2mlの唾液を溜めるだけの簡単な検査です。

以下が唾液検査の正しいやり方になります。

  1. 検査を受ける30分以上前から、飲食・歯磨き・うがいなどを控えておく
  2. 唇を閉じて唾液を溜め、検体容器の蓋を空けて直接唾液を滴下する
  3. 何度か滴下させて1ml〜2mlの唾液が溜まったら、しっかりと蓋を閉める
  4. 容器の外面をアルコール綿で拭く

自宅で行う場合は、専門業者の公式サイトでPCR検査キットを購入する必要があります。

PCR検査キットが届いたら同様の手順で唾液を採取して、返送した後、専用のサイトや書類の郵送で結果を確認できます。

唾液検査の費用

医師の診断を経て受検するPCR検査の場合、検査費用18,000円と検査判断料1,500円がかかり、7割は健康保険負担、3割は結果に関わらず公費扱いとなります。

唾液検査は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が疑われる症状の発症から9日以内に医療機関で受検した場合、保険診療となり、唾液検査自体の料金は無料になります(診察料などは発生)。

医師からPCR検査を推奨されなかった場合や無症状者の場合、民間の検査機関などで自費診療の唾液検査を受けられます。

この場合、費用相場は2万5千円〜3万円程度になります。

自宅で実施できるPCR検査キットの場合は、数千円〜1万5千円程度が相場になります。

唾液検査を受けるメリットとデメリット

採取した唾液

質問者

痛みがなく自宅でも受けられる唾液検査に興味津々です!

注意点はありますか?

吉嶺先生

唾液検査はメリットもあればデメリットもあります。

どのようなポイントに注目すべきか詳しくご説明しましょう。

PCR検査を取り扱う民間の検査機関が増えてきたことで、どの検体のPCR検査を受けていいか悩むこともあるでしょう。

唾液検査を受ける前に知っておきたいメリット・デメリットには、必ず目を通しておきましょう。

メリット

唾液による検査を受ける最大のメリットは、痛みを全く感じないという点です。

鼻咽頭検査の場合、綿棒を鼻の奥まで入れられた時に感じる強い痛みで涙を流す患者様もいますので、唾液を溜めるだけで検査を終えられるのは気が楽でしょう。

医療従事者にとっても、鼻咽頭検査より感染のリスクが低い唾液検査の方が安全に手際よく検査を進められるというメリットがあります。

また、PCR検査キットを購入すれば自宅で唾液検査を受けられるため、医療機関に直接足を運ぶ必要がありません。

PCR検査の中でも唾液検査は安心・安全の検査でありますが、後述のデメリットにも注目しておきましょう。

デメリット

簡単手順で検体を採取できる唾液検査ですが、鼻咽頭拭い液や鼻腔拭い液よりも新型コロナウイルスの検出率が下がってしまいます。

【PCR検査の感度の比較】

  • 鼻咽頭拭い液:約98%
  • 鼻腔拭い液:約94%
  • 唾液:約90%

唾液検査の感度も約90%と高いですが、必ずしも正しい結果が出るとは言い切れませんのでご注意ください。

また、唾液を検体にする場合、1ml〜2ml溜める必要があり、唾液を自力で出すことが難しい高齢の方は検査に苦労するでしょう。

鼻咽頭検査は発症日に関わらず医師の診断によって保険診療が可能になりますが、唾液検査の場合は、発症から9日以内でなければ保険診療は受けられません。

発症から10日以降は感度が30%〜70%も低下するため、自費診療を考えている方は十分に注意しましょう。

まとめ

唾液によるPCR検査の特徴やメリット・デメリットを詳しく解説しました。

唾液検査は、唾液を専用の容器に溜めるだけの簡単な手順で、新型コロナウイルスを感度約90%判定できるPCR検査です。

鼻に綿棒を挿入されるPCR検査を敬遠している方にとっては気が楽な検査で、鼻咽頭検査などよりも感染のリスクを抑えられる安全な検査ともいわれています。

いつ自分の身にふりかかるかわからないのが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の怖いところです。

今後、唾液検査を受ける機会が訪れるかもしれませんので、この記事の情報を参考にしていただけたら幸いです。