PCR検査とはPCR法という検査手法を用いた検査のことであり、PCRとは「Polymerase Chain Reaction (ポリメラーゼ連鎖反応)」を略したものです。
具体的にどのような検査手法であるのか詳しく見ていきましょう。
ニュースなどで耳にすることの増えた「PCR検査」という言葉。
このPCRとはPolymerase Chain Reactionの頭文字をとったものであり、日本語ではポリメラーゼ連鎖反応と訳されます。
検査の原理はDNAポリメラーゼという酵素と一定の温度変化サイクルを活用してゲノム内の検査のために抽出したいDNA配列部分のみを増幅させるというものです。
検出したいDNA配列がどのように増幅しているかというと、検出したいDNA部分専用の人工核酸と必要因子(酵素など)を一緒に混ぜ合わせ、温度を上げ下げすることで、「2本鎖DNAの分離・プライマーの結合・酵素反応」という一連の変化が繰り返されます。
この結果として検出したいDNA配列の増幅が実現されています。
PCR検査がどのような検査であるのかは分かってきたのですが、流行当初の時期には「偽陽性」や「偽陰性」という言葉を耳にすることがありました。
最近ではこの言葉を聞くことは減ってきているように感じるのですが、PCR検査の精度って十分なものなのでしょうか?
万が一の際に誤った診断がされてしまうのは不安に感じます。
PCR検査だけでなく、さまざまな検査の精度を表す指標として、「特異度」「感度」という指標があります。
これらの指標がどのようなものであるのか、またPCR検査の特異度、感度はどの程度であるのかについて見ていきましょう。
検査の精度を表す指標が特異度、感度です。
特異度とは非感染である状態を正しく陰性と判断している割合を示した指標であり、感度とは感染している状態を正しく陽性と判断している割合を示した指標になります。
真の状態(感染しているか否か)と検査による結果(陰性・陽性)を用いた指標が特異度、感度ですが、加えて「陰性適中率」「陽性適中率」という指標もあります。
陰性適中率とは陰性と判断された人の中で本当に陰性である人の割合を示した指標であり、陽性適中率とは陽性と判断された人の中で本当に陽性である人の割合を示した指標になります。
以下の表がこれらの指標をまとめたものになります。
陽性 | 陰性 | ||||
検査 結果 | 陽性 | 真陽性 | 偽陽性 | 陽性適中率= 真の陽性数/ 検査の陽性数 | |
隠性 | 真隠性 | 偽隠性 | 隠性適中率= 真の隠性数/ 検査の隠性数 | ||
感度= 検査の陽性数/ 真の陽性数 | 特異度= 検査の隠性数/ 真の隠性数 |
真の状態が陽性であるのに検査が陰性と判断されてしまう(偽陰性)ような原因には、検体の状態がウイルス感染して間もない状態にあったことや、検査過程における検出すべき対象ウイルスの増幅が適切に行われなかったことなどが挙げられます。
一方の、真の状態が陰性であるのに検査で陽性と判断されてしまう(偽陽性)原因には、検体の採取時にウイルスの感染はないものの鼻腔などに付着していたウイルスが含まれてしまうことや、検査過程に検体以外からのウイルスの混入(空気中からの混入)が生じることなどが挙げられます。
検査の精度を表す、特異度・感度については理解できましたか?
具体的な数値も使って確認しておきましょう。
仮に、感度が70%である検査があったとします。
この「感度が70%」が何を意味しているかというと、ウイルス感染している人が100人居たとして、そのうち70人は適切に陽性と判断され、30人は誤って陰性と判断されるということになります。
「特異度が70%」という場合にはウイルス感染していない100人のうち、70人が陰性、30人が陽性と判断されるということですね。
特異度、感度という指標が検査の精度を表すために用いられていることが分かったところで、PCR検査の精度がどの程度なのか確認していきましょう。
端的に伝えると、PCR検査は感度が低く、特異度が高い検査であると言われています。
それぞれに関して見てみましょう。
ニュースなどで「1度目の検査では陰性であったのに、後日検査した結果、陽性と診断された」という芸能人の感染に関する内容が流れてくることがあるかと思いますが、この事例は「感度が低い」ということを上手く捉えていると言えます。
実際には感染していたにも関わらず、1度目の検査にて陰性と判断されてしまったということですが、検体から採取したウイルス量が少ないといったことが原因で陰性になってしまうことがあります。
特異度、感度のご説明の中でも紹介したように、ウイルスに感染して間もないうちに検査をした場合には十分なウイルス量に至っていない可能性は大いに考えられます。
感度の精度においては検体の採取や運搬での取扱が重要になるということです。
一方の、特異度が高いというのは、ウイルスに感染していない人を適切に陰性と診断する割合が高いということですね。
PCR検査では他のウイルスを誤って検出してしまい「陽性」の判断がされることはほとんどありません。
インフルエンザウイルスなどを含めた病原体サンプル297例を検査した結果、誤って陽性と判断してしまったということには至っていません。
ここまで詳しく説明して下さってありがとうございました。
PCR検査の仕組みはもちろん、どの程度正確に判定がされているのかも特異度、感度の説明を通じて理解することができました。
流行に関するニュースが多く流れてくる一方で、ウイルスとの長い付き合いを考えていく場合には万が一の際を見越した、検査に関する知識を蓄えておくことが重要となります。
確かにその通りですね。
私自身PCR検査に関する説明を受けたことで、感染が疑われるような状況になったとしても、これまでより冷静に対応できる自信が付いたように感じます。
これを機に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査に関する幅広い知識を蓄えてみてもいいのではないでしょうか?
検査を受けるまでの体制がどのように用意されているのかについても理解しておけば、より一層安心な気持ちで居られるかと思います。
これからも積極的に情報を集められてみて下さい。
流行の当初はこのように長期化してしまうとは考えていなかったのですが、長期化している分、私の身近なところでもPCR検査を受けた経験のある人が増えてきました。
そもそもPCR検査とはどのような検査なのですか?