PCR検査を受けないほど軽症でも起こるコロナ後遺症の怖さ

監修医師プロフィール

吉嶺 太輔

鹿児島大学医学部医学科卒
皮膚科や在宅医療のクリニックを経て、現在、医療法人社団青い鳥会で在宅の訪問診療に携わり、自ら皮膚科を開業。
診療に従事していく中で今後のPCR検査の必要性を実感し携わる事に。
また、自分を必要とする患者様のためには休まず働き続ける覚悟の熱い医師です。

私たちの生活を大きく変えることとなった、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、重症化すると死に至ることもある恐ろしいウイルスです。

反対に、無症状の方もいるといわれている疾患ですが、無症状でも後遺症に苦しんでいる方がいることをご存知ですか?

症状の有無、重症度にかかわらず、後遺症によって何か月も苦しむことが、問題視されています。

そこでこの記事では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による後遺症についてと、後遺症を防ぐために必要なこと、PCR検査について詳しくご紹介します。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症

医師による問診風景

質問者

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症って聞いたことがあるのですが、やはり重症化した方は後遺症も重くなるのですか?

吉嶺先生

実は、後遺症は軽症、重症にかかわらず発生するとされていて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が無症状だった方も後遺症に苦しんでいるケースもあるのですよ。

質問者

それはつらそうです…具体的にどんな症状が後遺症として出るのでしょうか?

吉嶺先生

倦怠感や筋力低下のほかにも、さまざまな症状が後遺症として報告されています。

詳しくご説明しますね。

後遺症として多い症状

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復した方は、以下のような症状を訴えることがあります。

  • 倦怠感
  • 息苦しさ
  • 胸の痛み、違和感
  • 味覚障害
  • 記憶障害
  • 集中力低下
  • 不安、抑うつ
  • 不眠症
  • 脱毛
  • など

国内外の報告によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した人の、3人に1人は1つ以上の症状を経験しているということです。

インフルエンザなどにも後遺症は見られるのですが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による後遺症の頻度は高いといえます。

後遺症が起こる原因

なぜ他の病気に比べて後遺症が残りやすいのかはまだ明らかにされていませんが、後遺症が起こる原因は以下の3つではないかと考えられています。

  • 強い炎症によって臓器に多臓器不全が起こっている
  • 血栓症によって血管の詰まりが起こり血が流れなくなる
  • ウイルスが直接脳や心臓などに感染している

さらに、これらの症状は長引くことも報告されています。

体内でウイルスをうまく排除できずに、後遺症の症状が長引くのではないかと考えられています。

また、体内に入ってきた異物を攻撃する抗体が、間違って自分の体のたんぱく質を攻撃してしまう自己抗体によって、後遺症が引き起こされているという考えもあります。

このような状態を自己免疫反応といい、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症は、自己免疫反応によるものではないかとの意見もあります。

無症状だった方が後遺症を訴えることも

PCR検査が陽性でも無症状だった方や、症状自体が軽かった方でも後遺症によって寝たきりになるほど深刻な状況を経験しているケースがあります。

とくに無症状だった方は、急に後遺症の症状に苦しめられることになるので、メンタル不調と勘違いされてしまうこともあります。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症に苦しむ方に向けて、専門の外来を開設しているクリニックも増えてきているので、後遺症に苦しんでいる方は受診してみることをおすすめします。

若い人にも広がる後遺症の症状

感染時の重症度にかかわらず後遺症が発生するため、軽症で済んだ若い世代(10~30代)も安全とはいえません。

現場の医師は、若い世代の方たちが「コロナに罹っても軽症で済むから大丈夫」と行動していることに危険を感じています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状自体が軽症で済んでも、後遺症の症状が重症になるケースも稀ではないからです。

そのため、年齢にかかわらず3密を避ける、マスクや手指消毒をするなどの感染対策が必須なのです。

後遺症を負わないためにできること

電車内のつり革

質問者

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症が怖いものだということは理解できました。

まだ解明されていないことも多いのですね。

吉嶺先生

後遺症を負わないためには、感染予防をしっかり行い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹らないようにすることと、感染したらPCR検査をして適切な治療を受けることが一番の予防策となるのです。

もう少し詳しくその2点についてご説明します。

感染予防をする

後遺症を予防することは難しいですが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する予防はできます。

感染予防は以下のように行いましょう。

  • 3密(密集、密閉、密接)を避ける
  • 人ごみに行かない
  • 「目、口、鼻」を触らないようにする
  • 部屋の換気を心掛ける
  • 検温を毎日実施する
  • 免疫力を高める行動をとる(適度な運動やバランスのとれた食生活など)

感染している方と15分以上会話をすると、感染した方からの飛沫によってウイルスが体内に侵入し、感染するリスクが高まります。

ウイルスは「目、口、鼻」から侵入するため、不用意に「目、口、鼻」を触らないよう気をつけましょう。

換気状態が悪く湿度が低い場所はウイルスが部屋の中にとどまってしまうため、換気をしっかりすることが重要です。

適度な運動やバランスのとれた食事を心掛けることで、免疫力を高めることができます。

免疫力が高ければ、体内に侵入したウイルスを撃退できるので、免疫力を高めるよう心がけましょう。

感染初期段階でのPCR検査を

感染初期段階でPCR検査を受けることは非常に重要です。

PCR検査を受けて陽性と判定されることで、早期に治療を開始できます。

後遺症を負わないためには、初期段階で治療を受けて症状の進行を抑えることが効果的です。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療は、抗ウイルス薬によってウイルスの増殖を抑制し、免疫の暴走を抑えるということを行います。

これらは重症化を防ぎ、後遺症を防ぐことにもつながるので、濃厚接触者になってしまい、熱があるなどの症状が現れたら、早い段階でPCR検査を受けることをおすすめします。

PCR検査とは

咽頭拭い液を採取する医師

質問者

後遺症を防ぐためには、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹ってしまったらすぐに治療を受けることが大事なのですね。

そのためのPCR検査とは、どのような検査になるのですか?

名前は知っていてもPCR検査についてわからないことが多くて不安です…

吉嶺先生

PCR検査とは、DNAやRNAといったウイルスの遺伝子を増幅させて、その中にあるウイルスを判別する検査方法です。

感染してから発症する数日前から検出可能な検査となっています。

質問者

難しそうな検査ですが、どのくらいの正確さで陽性と判断できるのですか?

一度陰性だったのにもう一度検査をしたら陽性だったというニュースも見たことがあります。

吉嶺先生

PCR検査は、当初感度が70%、特異度が99%と言われていました。

そのため、偽陽性によって病床が埋まることがないように、検査の数を絞っているというのが現状です。

しかし、最近の研究で感度は90%以上あるとのデータも確認されています。

質問者

感度と特異度って何ですか?

吉嶺先生

感度は陽性の方が陽性と判断される確率で、特異度は陰性の方が陰性と判断される確率のことです。

まとめ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による後遺症についてと、後遺症を防ぐために必要なこと、PCR検査についてご紹介しましたが、参考になりましたか?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、治ってからも後遺症に苦しむ方が多くいらっしゃいます。

若い方、軽症だった方でも後遺症が起こりうる可能性は低いとはいえないので、日ごろの感染対策が非常に重要となるのです。

感染対策をするとともに、もし感染してしまったらPCR検査を受けて早期治療をすることによって、重症化を防ぐことができる場合もあります。

症状が出たらPCR検査を受けることが、結果的に後遺症の予防にもつながります。

万が一濃厚接触者になった、症状が出たということがあれば、かかりつけ医に相談するか、お住まいの自治体の保健所に相談するようにしましょう。